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お返事と妄想自堕落日記
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 とりあえず妄想投下に来ました。
え?日記?豚キムチをたくさん作りすぎたことですかね?(爽笑)
 



『悪趣味な奴』

そう、雪原に言い放ってから数日。俺たちは会話するどころか目も合わせなくなっていた。会話がほとんど無いのは前からだが、目も合わせないように避けられるのは初めてのことだ。
だが、仕方ない。雪原でなくても、面と向かって「悪趣味だ」と言われた人間にどうしてまともに向き合う気になれるだろう。あいつのことだから、きっと必要以上に俺に怯えて、そして嫌悪を――つまり、決定的に嫌われてしまったとしても何も不思議はない。

表面上は何とか平静を取りつくろっていたものの、内心はしょげ返っていた。さして近かったわけでもないが、この先雪原との距離はどんどん遠ざかるに違いない。普段からちょいちょい凹まされてきたが、今回は原因がわかりきっている分、ダメージも大きかった。

このまま、終わるのかな。何も伝えられないまま。

そんな思いが、ちらりと胸をよぎる。…いや、ずっと以前からそれは考えていたことだ。ただ、認めなくなくて今日まで来ただけのこと。

「やーしーろっ!どうした、元気ねーなー!」

突然、能天気な声に名前を呼ばれ、声のした方に顔を向ける。見ればへらりと緩んだ笑顔の男子生徒がいた。

「…何か用かよ」

俺は今誰とも話したくないんだ、だから向こうへ行ってくれ。という頼みを言葉に込めてみたが、アホのこいつに通じるはずがなかった。そいつ、相川は「あり?」と不思議そうな顔をして、むしろ俺の顔を覗き込むようにした。

「なんか元気なくね?矢代から呪いの視線がこねーと逆に気持ちワリんだけど」

こいつに関して色々説明するのは面倒なので割愛するが、相川は俺にとっては呪うべき相手であり、同時に俺の雪原への想いについても知っているという厄介な奴だ。相川はアホだが人は良いので、こいつなりに何くれと気を遣ってくれるのだが、何せアホなのであまり役に立った試しはない。総括すると「メンドくさい奴」ということになる。

「なーなー、どしたよ。言ってみ?俺くらいだろ、聞いてやれるのって」

相川は人懐っこい笑みを浮かべてがたがたと椅子を持ち出し、わざわざ俺の近くに陣取った。身長があるから、傍に来ると益々邪魔っけなことこの上ない。

「るっせ。何でもねぇよ」
「どうせあれだろ、雪原ちゃんと何かあったんだろ」
「……雪原ちゃんって言うな」

くそ、こいつはアホなくせにどうしてこういう時だけは妙に鋭いのだろう。

「またイジワル言ったんだろー。お前ね、好きな子をそんなイジメてばっかじゃダメじゃね?ていうか、今嫌われてね?すげ、避けられてんのな」
「…んなの、言われなくてもわかってんだよ…っ」

こいつ、悪意が無いぶんタチ悪ぃよ。よくもズケズケ言ってくれるもんだ。
だが結局、俺は事の顛末を、要点だけ掻い摘んで話した。何だかんだ言って、やっぱり俺は誰かに聞いてほしかったんだと思う。…一人で抱えるには正直辛かったと、話しながら気付いた。

「…俺、何であんな風にしか言えねぇんだろ」
「でも、それが矢代のいいところでもあるじゃん?それ無くなったら矢代じゃねぇじゃん?」
「いいところじゃねぇよ!」

…話したからといって、何か的確な解決策がもらえるかもしれない、などというのは淡い希望でしかなかった。やはりこいつの頭はカエル並みだ。こんな奴にカノジョがいることが単純に悔しい。まぁ、話を聞いてもらっただけでもよしとしよう。もうこれ以上は何も言うまいと話を打ち切ろうとしたところで、相川は何か思いついたみたいに、ぽんと手を打った。

「そーだ!じゃ、手紙は?口で言えねーんだったら手紙に書いちゃえよ、らぶれたー!」
「は…ぁ?」

あまりに突飛な、そして古典的な方法に、一瞬呆気に取られる。もしや冗談のつもりなのかと思ったが、本人はいたって真面目な顔をしていた。

「て、がみって。唐突すぎないか?いくらなんでも…」
「でも、顔見たらマトモに言えないんだろ?言えねーっつか、話にならねっつか」

それは、そうだ。

「いきなり手紙なんて見たら…びっくりしねーかな…」
「毎回脅されて泣かされるよりは、一回くらいビックリする方がマシじゃね?」

それも、そうだ。
でも確かに、手紙はいいかもしれない。手段の古っぽさが若干気恥ずかしいが、この際言っていられない。幸い、文章を書くのは苦手じゃないし。
…ん?あれ?ちょっと待て。

「…つか、もしやこれは、思い切り俺が告白する感じになっている、とか?」
「うん。てか、しろ」

当然と言った表情で、相川は頷いた。

「ちょっ…待てよ!だから、俺はすごく嫌われてんだって…!」
「あーもう、うじうじうじうじうっせぇなぁ!どっちにしたってこのままじゃ嫌われたまんまだろ?それなら告白してしまえ!そしてすっきりしろ!」

こ、こいつ、他人ごとだと思って…!
俺がまた口を開く前に、相川は「だって雪原ちゃんが可哀想だろ」ときっぱりと言った。男の俺が見ても、男前な顔をして。

「お前はいいよ。だけど、雪原ちゃんはわけもわからずビクビクしてんのかわいそーだろって言ってんの。だったら男のお前がキチンとするのはアタリマエだろ」

相川の言う事が正しい、と思った。俺は、自信も勇気も無くて逃げ回っているだけなんだ。雪原だってキョドってるけど、でも、俺だって同じじゃないか。いつもうまく話す自信が無いのを、苛立ちにすり替えて。
現に、このままではいられないと叫ぶ自分がいる。ちゃんと、好きだって伝えたい。例え、ダメでも。

「…わかった。書く。…お前に言われてってのが気に食わねーけど…」
「おーし!じゃあ、すぐ書け!ここで書け!んで、書いたら靴箱だぞ、くつばこ!」
「すんげぇベタだな…つか、見んな」

こうして俺は雪原に手紙を書く事になった。まさか、こんな事になるとは思わなかったけど、それでも何もしないよりは、出来ないよりはいい。
後ろを振り返ったって、ロクな思い出もないのだから、もうひたすら前に進むしかない。

もう、進み始めている。



「矢代って、字、うまいよなー。女みたいな字だよな」
「うるさい。普通だよ。お前の字が汚すぎんだよ、読めやしねぇ。字が汚い男は嫌われるぞ。この間、相楽言ってた」
「ええええええっ!うそっ!?まゆちゃんがそんなこと言うわけねーし!俺のことキライなんて言うわけねーし!」
「嘘だよ、ああもう、だからうるせーって、お前は!」





今回は相川くんに特別出演して頂きました。勝手に…すみませw
相川くんと、そのカノジョのまゆちゃんについては「恋煩い」さまでご確認ください。


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