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お返事と妄想自堕落日記
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 というわけで、今回で一段落しそうな矢代くんと雪原さん。勢いでがつがつ投下してますが、きっとまとめて読んだら恥ずかしいのだろうな…。いっつもそんなんだけどさ…。

ていうか、もう暴言もへったくれもない気がする。
色々飛ばし気味、ですが、長いです。



 




緊張する。
どうでもいいようなホームルーム終了後、俺はケータイだけ引っ掴んで(何故か、それは必要な気がした)体育館裏に急いだ。急ぐ理由もなかったのだが、どういうわけか息が上がるくらい急いで体育館裏に来る。正直、ぐずぐずしてたら足が竦んでしまいそうだった。

適当な所に座りこんで、意味もなく携帯電話をいじったりする。けれど、それもそのうち嫌になってやめた。だんだん緊張でそれどころじゃなくなってきた。緊張して吐きそうになるなんて、人生で初めてかもしれない。

来ないのが7割、来るのが3割。

確率的にはそんな感じだと予想していた。雪原のあの性格を考えて、手紙を渡したからといってここに来るとは考えにくい。しかも「来なくてもいい」と書いてしまったのだから、来なくたって責められやしない。
勢いであんな手紙を出してしまったけれど、よくよく考えればやっぱり無謀だった気がする。案が悪いわけじゃなく、時期的に。

(あーもう!やめろ)

がしがしと頭を掻いて、言い訳めいた考えを頭から追い出した。今更言っても仕方ない。どのみちこのままでも何も変わらないのだから、いっそ嫌われている事がはっきりしても問題はないじゃないか。
そう、たぶん、雪原はここには来ない。来てくれるとは思えない。
だって、いくら謝ったからって、あんな酷い事言った奴の話を聞こうなんて思うか?俺なら思わない。文句の一つも言ってやろうと思えば話も付けに行くが、でなければわざわざ関わらない。
遠くで部活動の掛け声みたなのが聞こえてくる。あぁ、これが止むまで俺はここで一人でこうしているんだろうな。
そんな事を、思い浮かべた時だった。

「…矢代、くん?」

小さな、消えそうな声。でも、間違えようもない、彼女の声。
まさか、という思いと、来てくれた、という思いが、どくりと心臓を叩く。

(き、来た…!)

ざあっと、体中の血の流れが速くなった気がする。立ち上がりながら、まず何て言えばいいかって事ばかり考えた。
でも、全然思い浮かばない。俺は、何を言う為に雪原を呼び出したりしたんだ?もうこのまま何もかも放り出して帰ってしまいたい。

「あの、ごめんね?途中、先生に呼ばれて…遅く、なっちゃって」
「いや…いいよ。そんなの」

とりあえず、落ち付け、冷静になれ!と心の中で自分に怒鳴りつつ、改めて雪原と向き合う。
雪原は、当然といえば当然だが、のっけから困惑した表情を隠さなかった。くるんとした子犬みたいな瞳が、不安気に俺を見上げている。こうして見るだけで、いつになく心臓が跳ねる。本当に、俺の体、どっかオカシイんじゃないってくらい。

「あ、の、お話って…」
「…あ、あぁ」

何か言わないと、そう思うばっかりでちっとも言葉にならない。何も言えない自分に苛立ちながらも、こうして雪原と向き合うのはこれで最後かも、と思ったりもした。手を伸ばしたら、触れられるくらい、近くで。

「…あの、この間の事、だったら」

震える声が、ぽつりと零れる。

「この間の事、私、だ、誰にも話したり、しないから…っ」

雪原は、何か決意を込めたような声でそう言った。でも、この間の事、って何だ?

「この間、って?」

そう聞くと、不意に雪原は頬を赤らめた。

「や、しろくんが、告白されてた、こと」
「…え?」

言われて、気が付いた。もしかして、あの時の事を俺が口止めするつもりで呼び出したと思っているのだろうか。あの、もう正直顔も思いだせない奴からの告白を。

「いや、それは関係ねぇし!」
「ごっ、ごめんなさ…っ!」

しまった。また大声出してしまった。違うって、これから告白しようって相手をビビらせてどうする、俺。
ふるふると震えて縮こまる雪原を前に、俺は一度深呼吸する。うん、大丈夫だ。ちゃんと言える。

「その…ごめん。いっつも大きい声でさ、雪原、俺にビビってるだろ、いつも」

ぴくりと、細い肩が揺れるのが見えた。

「色々、話したいって思うんだけどさ。どう言えばいいか、わからなくて。んで怖がられるから余計に苛々して」

それから一人で自己嫌悪して。遠くから他の奴とは普通に話したり笑ったりする雪原を見て、また、どうしていいかわからないようなやるせない気持ちになったりして。人を好きになるってこんなにしんどい事だとは思わなかった。

「…雪原が、俺の事をどう思ってるかとかは、もういいんだ。だけど、ちゃんと伝えたいっていうか…怖がらせようとか、そういう事、思ってるわけじゃないってことは、わかってほしくて、さ」

雪原は、胸元でぎゅうっと両手を組み合わせたまま、それでも俺の方をじっと見て、言葉を聞いてくれている風だった。
あぁ、やばい。心臓壊れそうだ。

「その…、俺、好き、なんだ。雪原のことが」

やっとの思いで絞り出した告白にも、雪原はしばらく表情を変えなかった。…まぁ、信じられないって気持ちは、わからなくはない。

「…え、と。なに?矢代くん、今、何て言ったの…?」
「……え?」

たっぷりした沈黙の後に、ぽつりと漏らした雪原の言葉に、俺は一瞬耳を疑った。
何て言った、って、え!?聞こえなかった?いや、そんなはずはないだろ。んな小さな声じゃなかっただろ。
しかし、ここはもう一度言うべきだろうか。

「え、だからさ。俺は、雪原に今、告白した、んだけど」
「う、そ…」

ゆるゆると、雪原の表情が変わっていく。柔らかそうなほっぺたが、ますます赤く染まっていった。

「な、矢代くんが、わっ、わたし…!う、嘘、そんなの…っ」
「ちょ、おい」

なんだ?そんな混乱するほど嫌だったのか、まさか。

「だだだ、だって…!あ、あくしゅみな奴、だって…!きらいって…」
「だから、それは勢いでだな!それに、嫌いだなんて言ってねぇよ!とりあえず、ちょっと落ち付け!」

思わず、雪原の腕を勢いで掴んでしまった。細くて、力を入れたら簡単に折れそうだ。この取り乱しようだから、もしかしたら振り払われるかもしれないと覚悟したが、それらしい抵抗はない。雪原はまだ金魚みたいに口をパクパクしていた。

「じょ、冗談、とかじゃ、なくて…?ほ、ほんとうに、ほんとう…?」
「あのなぁ!冗談でこんな事言うかよ!俺はそんな暇でもねーしバカでもねぇ!」
「ふぇっ…」

大きな声で怖がらせたくない、と言ったばかりなのに。雪原は、俺の声にびくりと震えた。目が零れそうに大きく見開かれて、俺を見ている。
くそ、いいよ。何度だって言ってやるよ。

「俺は、雪原の事が好きだ。冗談とか、罰ゲームとかじゃなく、本当に、本気で」
「…矢代、くん」
「だから、いつも怖がらせてごめんな、って、言いたかったんだ」

掴んでいた腕を、そっと離す。これが最後だ。だから、最後くらいは、ちゃんと笑って終わらせよう。

「これからは怖がらせないように…声は、掛けないからさ」

笑ったつもりだったけれど、どういう顔になったかはわからない。…でも、これで精いっぱいだ。悔いはない…って言ったら、嘘だけど。

「あ…あの!」

その場を離れようかどうしようか迷っていた俺に、雪原の弾かれたような声が聞こえた。
雪原は、どうしてか泣きそうな顔になっていた。ていうか、泣いていた。目に溜まった涙が、今にも零れ落ちそうになっている。…告白して泣かせるなんて、本当、情けないよな。

「…ゆきは」
「わ、私も」

そこで、目尻から涙が零れて頬を伝った。
ついさっき、混乱していた雪原の気持ちがよくわかる。何だ?どういうことだ?私も、って、何が?
わけがわからない、信じられない気持ちで突っ立っている俺の目の前で、雪原は消えそうな声で、でも、はっきりと言った。

「わ、私も、矢代くんのことが、すき、です」

ひっく、と、しゃくりあげる声が、体育館裏に小さく響く。

「え…ま、マジで」
「う、うん…っ」
「そ、そう、なんだ」

かくん、と膝から下の力が抜けた。だめだ、膝が笑ってる、立てない。がっくりと座りこんでしまった俺に、雪原は慌てて近寄ってきた。

「だ、だいじょうぶ…?」
「あー…平気。なんか、力抜けた。…そっか、そうなん、だ」

俺は、雪原が好きだ。
そして、雪原も、俺のことが、好き、らしい。つまり、両想いってことらしい。
じわじわと、胸があったかくなる。嬉しい。やばい、嬉しすぎて顔が勝手にニヤける。女の子と両想いになってニヤニヤするなんて、アホの典型だとは思うんだけど。
いいや、今日一日は俺はアホになり下がる。

「…とりあえず、帰るか」
「う、うん」
「あの、さ。一緒に帰って…いいんだよな」
「…うん」



よろしくお願いします、って妙にかしこまった言葉と共に、雪原は控えめに、けれど、ふわりと笑ってくれた。









どうやらくっついたようです。よかったね矢代wそしてここから矢代は「暴言王子」の名を返上し、「恥ずかしい奴」になり下がっていくわけですが、それもまた機会がありましたら。つか、意外にすぐやらかすと思います。
ここまでお付き合い下さいまして、ありがとうございました!


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