お返事と妄想自堕落日記
そんなわけでまたやらかす。赤城大地捏造話。とりあえず、吐き出しておく。
「うわ、何これ、うざっ!」と思った人はそのままスルーしてくださいませ。
「うわ、何これ、うざっ!」と思った人はそのままスルーしてくださいませ。
「…これは赤城様、いらっしゃいませ」
「すみません、急で申し訳ないんですが応接室は空いていますか?」
「今からでございますか?はい、ご用意できます」
「それは助かった。…お願いします」
お荷物を、と言われ上着とカバンを渡した。このホテルは普段から商談や会議で良く使っているので融通がきく。
まさか女学生を仕事場に連れて行くわけにもいかないし、かといって家に戻ればそれはそれでややこしい。大体、これから婚約、結婚をしようという男が年端もいかない女学生を家に連れ帰ったりなんてしたら事だ。
荷物を受け取ったコンシェルジュは、当然大地の後ろにいる連れの荷物も預かろうとしたが、一瞬その動きを止めた。ほんの一瞬。
少女はきょろきょろとあちこちに目をやっていたが、彼の存在に気付くと「あ!私は大丈夫です!」と慌てたように答えた。
「…親戚の子ですよ。でも、仕事の合間に来てるので父には内緒にしておいてください」
「…かしこまりました。後で何かお持ちしましょうか」
「ああいや…えっと、いややっぱりお願いします」
…我ながら苦しい言い訳だと思ったが、さすがに相手はプロだ。何事もなかったかのように「ではご案内いたします」と大地達の前を歩いた。
「…さてと。少しは落ち着いた?」
「あ、はい。…あの、ここ…それにお茶とかケーキとか…」
「いいよ、気にしないで。それくらいはどうとでも出来る大人ですから、僕は」
少女は、華奢なカップを持ち上げてこくりと紅茶を一口飲んだ。
「…おいしい」
「あそこで飛び込んでたら食べれないところだ。全身濡れ鼠で風邪ひいて終わりだったな」
「わ、わたしは本気で…!」
「ああ、ごめん。でもそんな滅多な事言うものじゃないよ。月並みな事しか言えなくて悪いけど、ご両親だってきっと君を心配してる。そして君がそんな不幸な死に方をしてしまったらきっと悲しむと思う」
そう言うと、彼女の表情がさっと曇った。小さな口がへの字に曲がっている。
そのいかにも子供っぽい表情から、まぁ子供の悩みなんて十中八九そんなものだろうと大地は嘆息する。親とケンカしたとか、学校の友達とケンカしたとか、そんなものだ。…もちろん本人にとっては重大なことだろうけど。
「…心配なんて、していないと思うわ」
「え?」
「だって、わたしの事を無理やりお嫁にやろうっていうんだもの。このまま死んで悲しんだとしても、それはきっと家の役に立たなくなるからよ。わたしの事を心配して悲しむんじゃないわ」
「お嫁にやる?君は結婚するの?」
驚いて聞くと、彼女は怒ったようにがちゃりとカップを置き、そのままフォークに持ち替えてためらいなくケーキにそれを刺した。
「ウチは、貧乏で…んぐんぐ…だから、私、お金持ちのお家にお嫁に行くんです…あ、コレ美味しい」
「へぇ…」
どこかで聞いたような話だ。
もぐもぐとケーキを頬張る彼女の言葉を、大地は待った。
「わたしだって…わたしだって、わかってます。家が大変なのだって何となくわかるし…それに、両親はわたしが苦労しないようにと思って、早くに決めてくれたんだってこと…それは、わかってるんです」
「……」
「でも!いくらなんでも早すぎるし…。わ、わたし、ちゃんと好きになれる人と結婚したい…」
「その相手の事は好きになれないの?」
「なれるわけないじゃないですかっ!」
ケーキを食べ終わりフォークを置いてから、彼女は大地に信じられないとでも言いたげに声を上げた。
「だって、だって…そのひと、わたしよりすごぉく年上の人で…成金だって言ってたし、きっと脂でテカテカしてそうなおじさんだもの…!絶対そうに決まってるもの…!」
言いながら、耐えられないとでもいった風に、少女は顔を手で覆った。大地としては何とも言葉のかけようがない。本人の言うとおりならば確かにそれは不幸な気がする。
だがそれよりも、やはりそうなのか、と大地は思う。金銭的には恵まれたとしても、意に沿わない結婚というのはやはり不幸で、そしてそれを誰より感じているのは彼女のような女性側なのだ。
「…とりあえず、涙を拭いて」
「泣いてません、別に」
「あっそう。…あのね、実は僕も近々結婚するんだ」
「…え」
少女は、呆けたように大地の方を見上げる。
「あまり詳しくは話せないけど…まぁ君と似たような話なんだ。まだ会ってもいないから何とも言えないけど」
「あなたも無理やりケッコンさせられるの?」
「いや、無理やりというか…でも、僕の気持ちが悉く無視されているのは確かだ。でもね、そういうものだって僕はとっくに諦めていたし、興味もなかったんだ。面倒事を押しつけられたとすら思っていた。でも、君の話を聞いて気持ちが変わったよ。…うまくいくかはわからないけど、とにかく僕はその人に誠意を持って向き合わなきゃいけないんだって」
言いながら、うまくいくはずはないだろうなと、大地は心の中で苦笑する。
藤津川琴子嬢は、聞けば今年女学校に入学したばかりらしい。そんな年の離れた娘と自分がどうしてうまく夫婦になれるだろう。
大地の話を真面目な顔で聞くこの少女と同じく、琴子嬢も嘆いているに違いない。「年の離れたオジサン」とケッコンさせられる不幸な決定に。
「家の事もご両親の気持ちも、確かに大事だけれど…一番大切なのは君の気持ちだから。どうしても嫌なら断ればいい。まずは会ってみて、誠実な人なら君の心も変わるかもしれないし。そうでないなら断りなさい。君のご両親だって、お金も大事だろうけど一番大事なのは君の幸せだからね」
何の励ましにもならない言葉だというのは百も承知だった。恐らくは彼女は結婚するのだろう。自分の気持ちが大切だと言っても、それを本当に優先できるかといえばそれは難しい。今回断っても、また同じような話がくるだけなのだから。
それでも、目の前の少女がやっと少し笑ってくれたことで大地は満足することにした。何の力にもなれないけれど、彼女には幸せであってほしいと、ついさっき会ったばかりだけれどそう思わずにはいられなかった。
*******
(なんだか、変な感じがする)
さっきから落ち着かない。何だか足元がふわふわする。ホテルの床が絨毯張りだから、ではない。
少し前を歩く彼を、ちらりと見上げてみる。琴子の父親よりも背が高い。
車から降りる時も、段差があるところでも手を差し出してくれた。お茶もケーキもごちそうしてくれた。
それと。
『一番大切なのは君の気持ちだから。嫌なら断ればいい』
そんな風に言ってくれた人は初めてだった。ただの慰めでも、琴子の気持ちに気付いてくれたのはこの人が初めてだ。
落ち着いていて、優しくて、男の人で、でもお父様や親戚のおじ様たちとは全然違う。
(どうしよう)
全然知らない人なのに。そして、きっともう二度と会うことはないのに。
ホテルのロビーで荷物と上着を受け取って、そこで別れる事になった。彼は仕事場へは歩いていくのだという。車には琴子だけ乗って、家まで送ってくれるんだそうだ。
「少し、考えたい事もあるから」と、彼は何故か困ったように笑う。
突然に切りだされた別れに、琴子は心底がっかりした。まだ離れたくなかった。
「それじゃあ、ちゃんと正しい行き先を告げてお家に帰るんだよ?」
「…はい。ありがとうございます」
「どういたしまして。…じゃあ、僕はここで」
「あ、あの!」
運転手さんに話をして、その場を離れようとする彼に、琴子は声をかけた。もう車に乗り込んでいたけれど、窓から身を乗り出した。行儀が悪い事はわかりきっている。
初めは名前を知りたいと思っていた。けれど、やっぱりそれはやめることにした。
だって、この人とはもう会えないし、ケッコンも出来ない。変に名前なんて知ってしまったら後が辛すぎる。
「わたし…あの、わたしの名前」
「え?あぁ…」
「琴子です。藤津川琴子といいます。今日は…ありがとうございました!今日の事は絶対絶対忘れません」
「………え?」
「さようならっ!!」
それだけ言って、琴子は車内にひっこむ。それと同時に車も動き出した。
憶えていてほしい、わたしのこと。わたしも絶対に忘れないから。
泣きたくなるのを必死でこらえながら、けれど琴子は最後彼がどんな顔をしていたか見ていなかった。
ベタ展開バンザーーイ!\(・∀・)/
この話の大地は20代前半、真ん中?だと思います。だからそれくらいの年の差です。
たぶんまだ続く。てか、意外に長くなってしまう。
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