お返事と妄想自堕落日記
ふぉぉ、ちょっと。
妄想せずにはいられなかった。
妄想せずにはいられなかった。
「…うわぁ、降ってきた」
それまでもぽつぽつとは降っていたけれど、本格的に雨足が強くなってくる。
あぁ、ついてないなぁ。最近本当についてない。お昼に食べたかったメロンパンは目の前で売り切れちゃうし、当たるはずじゃなかった英語の訳もどうしてか順番が回って来たし。
適当に屋根のある店先に飛び込む。簡単にハンカチで体の水分を払った。
改めて屋根の無いところを見れば、本格的に雨が降り始め、黒々と濡れている。
(…雨)
――やみそうにないね。
ふと、いつかの雨の日が頭に浮かぶ。また会えるかもしれない、と思い、けれどすぐにそんなわけないと首を振った。
(…やだ。何考えてるんだろう)
たまたま一緒に雨宿りをして、少し話をしただけなのに。傘を買いに行くって、一緒にコンビニまで走った。
別に、ただそれだけのことなのに。
周りには当然ながら傘をさした人達が増えてきていた。色とりどりの傘をぼんやりと見つめる。色んな傘、色んな人たち。
別に、探してるわけじゃない。探したって見つかるわけはないし、きっと向こうは私の事なんて忘れてしまっていると思う。
それでも、同じくらいの高校生の男の子を見かけるとついどんな人なのか見てしまう。そして思っている人と全然違う事を確認して、安心して、それからがっかりする。
(そんな簡単に会えるわけないのに)
第一、会ったらどんな顔すればいいんだろう。会えて嬉しいって言えばいいの?ずっと会いたいって思ってたんだよって。私の事憶えてる?一度しか会ってないけど、私はずっと憶えていて、それで―――。
「…って、もう!違うってば!」
「…何してるんだ、お前」
「…え?志波くん?…って、うわぁ!びしょぬれだよ!?」
「傘、忘れたからな」
「なら走ればいいのに…」
「…面倒くさい」
「何か拭くもの、持ってる?…あ、私の貸してあげる」
「あぁ、悪い」
ハンカチを受け取る志波くんは「お前、一人で色んな顔して何してたんだ」と、さして興味もなさそうに言った。
「べ、別に、色んな顔なんて…」
「してた。はっきり言って、変だぞ」
「うぅ…そ、そんなに?」
「あぁ、気を付けた方がいい」
「志波くんに真顔で言われると何か凹む…」
「…お前、ときどき何気に失礼だな。…これ、サンキュ」
洗って返した方がいいか?と尋ねる志波くんに、そんなのいいよと言いながらも私は雨の降る道に目をやる。
今の時間帯だからか、歩いているのは学生が多かった。羽学生はもちろん、はば学の生ともちらほら混じっている。
「…誰か待ってるのか?」
「え?」
「探してるだろ?さっきから」
「ち、違うよ!」
慌てて否定する私に、志波くんは一瞬不思議そうな顔をしたが、それ以上は何も言われなかった。
探してるだなんて、待ってるだなんて。そんなの、違うもん。
探しても、待っても、会えないもの。
「…やまないね」
「そうだな」
「志波くん、傘持ってないんだよね」
「持ってたら、こんなところで待たねぇ」
「だよねぇ…どっちかが傘持ってたら二人で帰れたのにね」
「……」
何の反応も返ってこないので思わず見上げると(私と志波くんの身長差だとどうしたってそうなる)、志波くんは呆れたような顔をして私を見降ろしていた。
「…え?な、なに?」
「別に、いいけどな。俺は気にしないから。でも、あんまりそういう事、簡単に言うなよ」
「はぁ…?」
志波くんって悪い人じゃないけど時々わからないなぁ。
そう思って、何気なく視線を動かした先に一つの傘が目に留まる。
正確には、一つの傘に入っている二人の人影。
「……!」
「…おい、どうした?」
紺色のシンプルな、いかにも男の子が持つような傘に、仲良さそうに話す男の子と女の子が見えた。…はば学の制服の。
こっちに向かって歩いてくるのが見えて、私はとっさに志波くんの後ろに隠れた。
…あぁ、本当にツイテない。
「…おい、何だ急に…」
「ちょっとだけ、このままでいて」
「はぁ?なんで」
「お願いだから」
相合傘の二人は気付いていないようだった。女の子の方が少し振り返って、男の子の方――彼――もこっちを見た気がしたけど、よくわからない。志波くんの後ろでやり過ごすので精一杯だった。
(…そうだよね)
だって、すごくカッコ良かったもの。全然知らない別の学校の私にも親切にしてくれるくらいだもの。
…カノジョくらい、いるよね。
(あんなの、見たくなかった)
わかってたけど、こんなの、知りたくなかった。
「…私、もう行くね」
「行くって、まだ降ってるぞ?」
「いいの、走るから。…じゃあ」
「おいっ…?」
志波くんが止めるのを振り切って、かばんを抱えて走り出す。
途端に全身に雨粒が当たって、手も髪も顔も濡れた。
「…っ、ぅ…」
全然ツイテないけれど、今日は雨に振られて正解だったんだ。
お陰で泣いているのは、誰にもわからないから。
******
「…ねぇ、さっきの羽学のコ、カッコよくない?背、高かったぁ。…ちょっと見た目コワイけど」
「なら、アイツに頼んで傘入れてもらえばいいよ。僕は晴れてお役御免ってわけだ」
「そんなこと出来るわけないでしょ!ユキじゃあるまいし。それに、カノジョいたっぽいもん。女の子、後ろに見えた」
「へぇ…二人して雨宿りか。傘、どっちも持ってないのかな」
「さぁ?ユキはさすが用意がいいよねぇ」
「まぁね。お陰で君と相合傘だよ、不本意ながら」
「だからー!ゴメンってば。カレ、予備校だって言って先帰っちゃったの!」
「僕も予備校なんですけど?」
「あーもーウルサイ!そんなんだからユキにはカノジョが出来ないんだ。せっかく見た目だけはいいのに」
「…あのね。僕に傘入れてもらってるってことを忘れずに発言した方がいいんじゃない?」
一雪は呆れて言いながら、頭ではさっき見た羽学の二人を思い出していた。二人、たぶん二人だ。女の子の方は男の影にいたからよく見えなかったけれど。
(…少し、あの子に似ている気がしたんだけど)
考えて、まさかと思いなおす。そんな偶然、そうそうあるわけがない。
隣の子は、一雪にはかまわず話を続けている。
「…でも、二人いてもお互い傘持ってなかったら困るよねぇ。…どうすんだろね?」
「さぁ…」
「二人して雨宿りしててもねぇ?」
「予備校行くってほったらかしにされるよりマシなんじゃない?」
「もうっ!うるさいってば、ユキのバカ!」
僕だったら、傘を買いに行く。あるいは困らないように日ごろからきちんと傘を持っておく。
…それで、今度は一緒に帰るんだ。
雨の日に、傘はもう忘れない。いつ君に会っても、ちゃんと傘に入れてあげられるように。
「やー!ちょっとユキ!もうちょっとそっち行ってよ!濡れる!パーマ取れちゃう!」
「やだよ、僕が濡れるだろ。これは僕の傘だからね」
「もぉぉっ!賭けてもいいけど、ユキは絶対カノジョできないんだから!」
「はいはい。ほら、暴れると余計濡れるよ」
この傘は、本当は君のものだから。
本当は雨の日に女の子と相合傘をしている赤城を偶然見つけるデイジーというのを描きたかっただけのですが予想以上に志波が出張りました。すいません。志波主じゃなくても志波を絡ませたくてすみません。
でも何か、赤城←デイジー←志波でもいいかなとちょっと思ってしまった…久々親友モード志波。
デイジーが誰かを気にしてるのはわかるんだけど、それが誰なのかわかんなくってやきもきする志波くんとか素敵だ。いかん、親友モード大好き熱が。いかん!のだが想像してしまう!!
デイジーはもうあの雨の日を運命だと思っていればいい。頭では「そんなこと、あるわけない」って思ってても赤城のことを探せばいい。他の男の子なんて目に入らなければいい。
そして名前も顔も知らぬ赤城に嫉妬すればよいよ、志波。
赤城は赤城なのでもちろんデイジー一直線です。あの一緒に相合傘の子は単なる友達っていうかクラスの女子です。彼氏いるくせに何で僕が送って行かなきゃならないんだよと、若干面倒くさいくらいに思ってます。赤城にはデイジー以外は皆同じ顔に見えるからね。「あの子かわいくね?」とかって話になっても「そうかな?別に、普通じゃない?ていうかどの子?顔と名前が一致しないんだよね、いまだに」とかって言ってます。
…って、志波さん誕生日が近いというのに、何でこんな涙目な話を書くのか…。
違う違う!あれは親友でなくフツーの友達の志波さんだ!間違えるな、私。
なぜ突然赤城主なのかといえばそれは色々事情があるのですがどーでもいいので省きます。
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